循環取引とは?初心者向けにわかりやすく解説【不正会計のリスクと実態】
「最近ニュースで『循環取引による不正会計』という言葉を聞いたけど、一体どういうもの?」 「自社の取引が、もしかしたら循環取引に該当しないか心配…」
こんにちは。循環取引調査を専門とする公認会計士奥村佳史事務所です。 企業の不正の中でも、特に巧妙で発覚しにくいとされる「循環取引」。
この言葉に、難しさや不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、循環取引の基本から、なぜそれが不正とされるのか、そしてどのような動機で行われるのかまで、専門家の視点から図解も交えて誰にでも分かるように解説します。
この記事を読めば、循環取引の全体像を正しく理解し、知らないうちに不正に加担してしまうリスクを避けることができます。
循環取引とは?その基本的な仕組み
まず、循環取引とは何なのか から確認しましょう。
循環取引とは、複数の企業や当事者が共謀し、特定の商品の売買やサービスの提供などを相互に発注し繰り返すことで、実態のない架空の売上高を損益計算書(P/L)に計上する不正な会計手法です。
言葉だけだと少し難しいので、簡単な図で見てみましょう。
【循環取引の基本モデル】
(ここに「A社 → B社 → C社 → A社」と商品とお金が回るシンプルな図を挿入するイメージです)
- A社がB社に商品Xを1億円で販売します。(A社:売上1億円 計上)
- B社がC社に同じ商品Xを1億円で転売します。(B社:売上1億円 計上)
- C社がA社に同じ商品Xを1億円で転売します。(C社:売上1億円 計上)
この取引の結果、どうなるでしょうか? A社、B社、C社はそれぞれ帳簿上に1億円の売上を計上できます。しかし、商品Xは各社の間をぐるりと一周して、結局A社に戻ってきただけです。誰もこの商品Xを最終的に使うことなく、ただ伝票と商品(時には商品自体も動かさず伝票のみ)が回っているに過ぎません。
これが循環取引の基本的な仕組みです。関わる会社が増え、取引が複雑になるほど、その実態は見えにくくなります。
「普通の転売」と「循環取引」はどこが違うのか?
「でも、商品を転売すること自体は悪いことじゃないのでは?」
その通りです。ここが循環取引の巧妙な点で、一つひとつの取引だけを見ると、ごく普通の「転売」に見えてしまうのです。
例えば、ある業界で特定の商品の在庫がだぶついてしまった際に、同業他社に一時的に買い取ってもらい、在庫量を調整したり資金を確保したりすることは、商慣習としてあり得ます。
では、問題のない転売と不正な循環取引は、何が決定的に違うのでしょうか。それは取引の目的と実態にあります。
| 項目 | 問題のない転売 | 不正な循環取引 |
|---|---|---|
| 目的 | 在庫調整、資金確保など | 売上の架空計上(粉飾) |
| 前提 | いずれ最終消費者に届くことが期待される | 商品が自社に戻ってくることが前提 |
| 実態 | 取引に経済的な合理性がある | 取引に実態・合理性がない |
ポイントは、その売上が本当に実現する見込みがあるか? という点です。
不正な循環取引は、最初から「商品を最終的に誰かに売って利益を得よう」という意思がありません。言い換えれば、転売を繰り返して最終的にその商品が自社に戻ってくることが分かっているのです。このような取引で生まれた売上は、会計上「実現した」とは到底言えず、実態のない架空のもの、つまり不正と判断されるのです。
なぜ循環取引に手を染めてしまうのか?その動機と目的
では、なぜ企業や担当者は、このようなリスクの高い不正に手を染めてしまうのでしょうか。主な動機は3つあります。
1. 会社を「成長企業」に見せかけるため
循環取引を使えば、他社と結託するだけで損益計算書の売上高を意図的に膨らますことができます。これにより、実態は停滞していても、売上高がどんどん伸びている成長中の会社のように見せかけることが可能です。株主や投資家、世間からの評価を不正に高めようとする経営者がこの手口を使うことがあります。
2. 厳しい「売上ノルマ」から逃れるため
経営者から従業員に対して、達成困難なレベルの厳しい売上ノルマが課せられることがあります。「営業成績を達成できないと責任を追及される」といった強いプレッシャーから、担当役員や営業部長などが取引先と共謀し、循環取引で帳簿上の数字だけでも達成したかのように見せかけるケースも後を絶ちません。これは個人の保身から始まる、非常に根深い問題です。
3. 金融機関から「融資」を引き出すため
循環取引によって売上高や利益が水増しされた見栄えの良い決算書。これを銀行などの金融機関に提出し、業績が好調であると偽って融資を引き出すケースも典型的です。これは金融機関を欺く行為であり、極めて悪質です。
いずれの動機であれ、取引の実態がないにもかかわらず売上高を過大に計上しているため、これらはすべて粉飾決算という重大な不正会計に他なりません。
循環取引が「犯罪」となる法的根拠
「不正だとは分かったけど、具体的にどんな法律に違反するの?」
循環取引によって作られた虚偽の決算書を正式なものとして提出・公開すれば、それは明確な法律違反となり、厳しい罰則の対象となります。
- 会社法違反(計算書類等の不実記載) 取締役などが、会社の財産状況を偽って示す内容の計算書類を作成・提出した場合、罰則が科せられます。
- 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載) 上場企業が、循環取引で粉飾した決算内容を有価証券報告書に記載して提出した場合、法人と役員個人に非常に重い刑事罰が科せられます。これは、株式市場の公正性を著しく害する行為だからです。
- 詐欺罪 粉飾決算書を使って金融機関を騙し、融資を受けた場合には、詐欺罪(刑法)に問われる可能性も十分にあります。
このように、循環取引は単なる会計上の間違いではなく、企業の存続を揺るがし、関わった個人の人生をも破滅させかねない不正なのです。
まとめ:正しい知識で不正のリスクから身を守ろう
今回は、不正会計の手口である「循環取引」について解説しました。
- 循環取引は、複数の企業が共謀して売買を繰り返し、架空の売上を計上する不正会計。
- 「商品が自社に戻ってくる」前提であり、実態がない点で、正当な転売とは全く異なる。
- 動機は「成長偽装」「ノルマ達成」「不正融資」など様々だが、いずれも粉飾決算に該当する。
- 会社法や金融商品取引法に違反する明確な犯罪行為であり、厳しい罰則がある。
循環取引は、一見すると通常の商取引との見分けがつきにくい、巧妙な手口です。だからこそ、その仕組みとリスクを正しく理解しておくことが、自社や自分自身を不正から守る第一歩となります。
もし、ご自身の会社の取引に少しでも不安を感じたり、不正会計に関するより詳しい情報が必要な場合は、決して一人で抱え込まず、私たちのような外部の専門家にご相談ください。
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投稿者プロフィール

- 循環取引調査に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。現状が既にベストな状態であれば、現状維持を優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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